NASにUPSを付けようと決めたはいいものの、製品ページを見比べても違いがよく分からない、というのが正直なところではないでしょうか。
私もそうでした。同じバッテリー容量でも価格が倍近く違ったりして、「いや、何が違うんですかこれは⁉」状態。 何にお金を払っているのかが見えないんですよね。
私は2024年にオムロンのBW55Tを導入して、2年ほど使っています。実際に停電も経験しました。 その経験と、あらためて仕様を調べ直した結果をもとに、選ぶときに見るべきところをまとめます。
なお、そもそもUPSが必要かどうか、実際に停電が来たときに何が起きたかは下記の別記事に書いています。

結論:見るのは5つだけ
先に答えを書きます。私はこの5つで判断することにしました。 ここさえ押さえれば、どのメーカーのどのモデルでも選べるはずです。
- 容量:繋ぐ機器の合計消費電力の1.5倍を目安に
- 給電方式:家庭のNASなら常時商用給電で足りる
- 出力波形:正弦波にしておく。ここは妥協しない
- Synologyの互換性リスト:載っているモデルから選ぶ
- バッテリー交換の費用と寿命:本体価格だけで判断しない
順に見ていきます。
① 容量:繋ぐ機器の消費電力を合計する
まずここからです。UPSの出力容量(W)が、繋ぐ機器の合計消費電力を上回っていること。 これが大前提になります。
各機器のカタログ値を足すだけです。我が家だとこうなります。
| 機器 | 消費電力(メーカー公称) |
|---|---|
| Synology DS423+ | 28.3 W(アクセス時)/8.45 W(HDDハイバネーション時) |
| Synology DS220+ | 14.69 W(アクセス時)/4.41 W(HDDハイバネーション時) |
| PLANEX FX2G-08EM2 (2.5GbEハブ) | 最大 8.6 W |
| 合計 | 約 52 W |
対してBW55Tの出力容量は550VA/340W。負荷率でいうと15%くらいで、かなり余裕がある状態です。
余裕を持たせる理由は2つあります。ひとつは起動時。 NASは電源投入時にHDDが一斉にスピンアップするので、定常時より大きな電力を食います。もうひとつは将来。 NASを増やしたり、ハブを大きいものに替えたりすると合計は増えます。私は合計の1.5倍くらいを目安に考えています。 これくらい見ておけば、後で困ることはないかと思います。
ちなみに、UPSの容量はVA(皮相電力)とW(有効電力)の2つで書かれていて、どちらも超えないようにする必要があります。 BW55Tなら550VAと340Wの両方です。W側のほうが先に効いてくることが多いので、Wで見ておけばだいたい足ります。
各社が選定ツールを公開しているので、それに合計値を入れるのが手っ取り早いです。
なお、繋いだ後にDSM側で負荷率が見られるわけではありません。 「あとで画面を見れば分かるだろう」と思っていると当てが外れます。買う前に、計算しておくのが結局いちばん確実です。
② 給電方式:家庭のNASなら「常時商用」で足りる
UPSには大きく3つの方式があります。
| 方式 | 解説 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 常時商用給電 | 普段はコンセントの電気をそのまま流し、停電した瞬間にバッテリーへ切り替える | 家庭のNAS・PC。安くて発熱も少ない |
| ラインインタラクティブ | 上に加えて、電圧の変動をある程度補正してくれる | 電圧が不安定な環境 |
| 常時インバータ給電 | 常にバッテリーを経由して給電。切替そのものが発生しない | サーバールーム・業務機器 |
下にいくほど高性能で、高価で、発熱も消費電力も大きくなります。
BW55Tは常時商用給電方式で、切替時間は10ms以内。家庭のNASなら、この方式で十分だと考えています。 実際、うちは2年間これで足りています。
③ 出力波形:ここは正弦波にしておく
地味ですが、いちばん見落とされているのがここだと思います。
停電してバッテリー運転に切り替わったとき、UPSが出す電気の波形には種類があります。
- 正弦波:コンセントから来る電気と同じ波形。安心
- 疑似正弦波・矩形波:正弦波を階段状に近似したもの。安価だが、機器を選ぶ
何が問題かというと、最近の電源は「PFC(力率改善)回路」を積んでいるものが多く、これが非正弦波(疑似正弦波・矩形波)の電気を嫌うのです。動かない、異音がする、といった話が出てきます。
BW55Tは商用運転時・バックアップ運転時とも正弦波です。オムロンもBW-Tシリーズを「PFC電源対応」として案内しています。
価格を優先して疑似正弦波のモデルを選ぶこと自体は悪くないのですが、その場合は繋ぐ機器の電源が対応しているかを先に確認してみてください。 ここをケチって「停電したときだけ動かない」となったら、UPSを買った意味がなくなります。
④ Synologyの互換性リストに載っているか
SynologyはUPSの互換性リストを公開しています。ここに載っているモデルから選ぶのが確実です。
理由がもう1つあって、リストに載っているモデルは「ネットワークUPSサーバー」機能の対象でもあります。これは1台のUPSで2台目以降のSynology製品まで守れる仕組みなので、複数台運用している方は絶対に外せないポイントです。
そしてリストのページに、しれっとこう書いてあります。
USBデバイスはSynology製品のUSBポートに直接接続してください。USBハブ経由でのデバイスの接続はサポートされていません。
NASのUSBポートって少ないので、ハブで済ませたくなるんですよね。でもダメです。 直結用に1ポート空けておく必要があります。
⑤ バッテリー交換の費用と寿命
UPSは買って終わりではありません。中身は鉛蓄電池なので、数年で寿命が来ます。
BW55Tのバッテリー期待寿命は5年(周囲25℃)です。
ポイントはここからで、交換用バッテリの値段が、本体とほとんど変わりません。
| UPS本体 BW55T | 約18,700円〜 |
| 交換用バッテリパック BWB55T | 約14,800円〜 |
5年後、バッテリーを買うのか、本体を新品にするのか。この2つがほぼ同じ土俵に乗ってしまうということです。私は、そのときに両方の値段を見比べてから決めることになるだろうと考えています。
さらにもうひとつ。この記事を書いている時点で、オムロンの直販ショップではBWB55Tが「入荷待ちのため お買い求めいただけません」と表示されています。他の販売店には在庫があるので買えないわけではありませんが、交換用バッテリの型番が用意されている=5年後に欲しいときに買える、ではないということですね。
その上で見ておきたいのが、ホットスワップに対応しているかどうかです。いわゆる動かしたまま自分で交換できるか、ということですね。非対応だと、止めて差し替えて充電するあいだ、UPSとして使えません。BW55Tは対応しています。
これは地味に効きます。 非対応だと、バッテリー交換のたびにUPSを止める=繋いでいる機器を全部落とすことになります。NAS 2台を繋いでいる我が家だと、バッテリー交換のために2台のNASをわざわざ止めるという大変面倒なことになります。(我が家のNASはできる限り止めたくない事情も…理由は別記事に書くかも)
なお、後で触れるご愛用者登録の無償提供期間内なら、バッテリー代はかかりません。その場合は買い替えではなく交換の一択になるので、交換のしやすさは見ておく価値があります。
参考までに、私が比較検討したCyberPowerのCPJ500は、交換自体はできます(取扱説明書に「バッテリ交換」の章があります)。ただし同じ取説に「本装置のバッテリ運転中に、バッテリを装置から取り外さないで下さい」と書かれており、手順もUPSを止めてから差し替えて8〜16時間充電する形です。
5つの軸のほかに、買う前に知っておくと得なこと
DSMに予測バッテリー時間が出るかは、機種によります
ここは私が買ってから知った話なので、これから選ぶ方には先に伝えておきたいです。
UPSをNASに繋ぐと、「デバイス情報」でUPSの状態を見られるようになります。我が家のBW55Tだと、こうです。

「お、あと何分持つのか見られるのか」と勇んで開いて、見事に肩透かしを食らいました。 分かるのはモデル名・接続状態・バッテリー残量まで。残念ながら、BW55Tは予測バッテリー時間は利用不可となり、表示されません。
ところが、予測バッテリー時間がちゃんと出ている機種もあります。
| UPS | DSMでの予測バッテリー時間 | 出典 |
|---|---|---|
| オムロン BW55T(我が家) | 利用不可 | 上のスクリーンショット |
| CyberPower SL550U JP | 4,453秒(約74分) | かかしログ さん |
| CyberPower CP550JP | 825秒(約14分) | studio9(中原一雄)さん |
CyberPowerの2機種については、かかしログ さんの記事とstudio9 さんの記事で、それぞれ実際の表示を確認させていただきました。どちらもDSMの同じ画面の話です。
つまり、UPSがNASに渡している情報の量が、機種によって違うわけです。DSM側の問題ではありません。
なお、私が確認できたのはこの2機種だけなので、「CyberPower製なら必ず出る」とまでは言えません。メーカーではなく機種で決まる、という理解が正確かと思います。
これ、地味に効いてきます。「今、あと何分持つのか」が分かるかどうかは、停電が長引いたときの判断材料そのものです。出ないと、こちらは残量パーセントを見ながら勘で判断するしかありません。実際に測って把握したい人なら、ここは見ておく価値があります。
私が オムロン BW55T にした理由

きっかけは、YouTubeで見た、NASにUPSを取り付ける方法を解説した動画でした。ただ、そこで紹介されていたのはCyberPowerの製品で、私はオムロンを選んでいます。
決め手を1つに絞れと言われると、正直むずかしいのですが、覚えている範囲では、
- Synologyの互換リストに載っていた
- 同クラスと比べて価格が手頃だった
- オムロンの愛用者登録の特典が魅力的だった
- 外観が角ばっていて、置いたときに無駄がない
どれか1つが決定的だったというより、引っかかる点が無かったから選んだ、という感じですね。「これだ!」という熱い理由が出てこなくてすみません。 ただ、2年間ノートラブルで動いているので、この地味な選び方は間違っていなかったと思っています。
2年使って、いちばん効いているもの
2年使ってみて、良かったなと感じるのはご愛用者登録の特典です。
オムロンの場合、UPS本体の購入後1カ月以内にご愛用者登録をすると、次の特典が受けられます。
- バッテリ無償提供サービス(BW55Tは3年間)
- 交換時期のお知らせ(4年後にバッテリ交換時期、6年後に本体の買い替え時期をメールで通知)
- シャットダウンソフトのバージョンアップ情報
- 保証期間内の交換品先出しサービス
この中で私が手厚いと感じたのは、バッテリ無償提供サービスです。 オムロンはこう案内しています。
バッテリはご使用の環境により、予想以上に劣化をしてしまう場合があります。ご愛用者登録をしていただければ、無償提供期間内は無償でバッテリを提供いたします
⑤で書いたとおり、交換用バッテリは15,000円程度します。しかも劣化の速さは置き場所の環境に左右されるので、自分では読み切れません。そこを無償で受けられるのは、実質的な保険だと考えています。サポートが手厚いのはグッドポイントです!!
そして、この「購入後1カ月以内」という条件は、バッテリの無償提供だけでなく全部の特典にかかります。 買ったらすぐ登録しましょう。
→ OMRON UPS ご愛用者登録 / バッテリ無償提供サービス
静かで、熱くない
居住空間に置く機材なので、ここは気になる方が多いと思います。
BW55Tはファンレス(自然空冷)で、公称の騒音は40dB以下。普段は完全に無音です。 置いていることを忘れます。

まとめ
- 見るのは5つ。容量/給電方式/出力波形/互換性リスト/バッテリー交換の費用
- 容量は合計消費電力の1.5倍が目安。 起動時のスピンアップと、将来の増設ぶんを見ておく
- 給電方式は、家庭のNASなら常時商用給電で足りる
- 出力波形は正弦波にしておく。 最近の電源はPFC回路を積んでいるものが多い
- Synologyの互換性リストから選ぶ。 ネットワークUPSサーバー機能の対象かどうかも兼ねている
- 買って終わりではない。 バッテリーは5年程度で寿命が来るが、実売では交換用バッテリと本体新品がほぼ同額。「替えて使い続ける」が成り立つかは5年後に見比べて決める
実際に停電が来たときの記録と、設定手順・見落としやすい落とし穴は本編にまとめています。ぜひ合わせてご覧ください!!


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