AM5環境の自作PCで、何も操作していないアイドル状態の消費電力が高いことが気になり、PC本体をコンセント側で測ってみました。
使っているCPUはAMD Ryzen 7 9700X。GPUはRadeon RX 9070 XT、メモリはDDR5-6000の64GBという構成です。
最初に測ったときは、何も操作していないアイドル状態で約110Wでした。
そこでBIOSのメモリ設定を見直し、AMD EXPOを解除して条件を揃えて測り直したところ、中央値は113.95Wから98.9Wへ低下しました。差は約15Wです。
この記事では、AM5パソコンのアイドル消費電力が高いときの確認項目として、EXPO設定を見直した実例を紹介します。測定条件、性能とのトレードオフ、年間電気代への影響を、実測した範囲と推測を分けてまとめました。
結論:EXPO解除で約15W下がった
結果を先にまとめます。
| 設定 | メモリ動作 | アイドル消費電力 |
|---|---|---|
| EXPO-6000有効 | DDR5-6000 CL34 | 中央値113.95W |
| EXPO解除 | DDR5-4800 CL40 | 中央値98.9W |
| 差 | — | 15.05W減少(13.2%) |
変更したのはBIOSのEXPO設定です。CPUやGPU、電源、ストレージなどのパーツは交換していません。
ただし、EXPOを解除すればすべてのAM5環境で同じだけ下がる、という意味ではありません。マザーボード、メモリ、BIOS、接続機器によって結果は変わります。今回は、あくまで私のPCで確認できた実例です。
測定したPCの構成
測定時の主な構成は次のとおりです。
| パーツ | 構成 |
|---|---|
| CPU | AMD Ryzen 7 9700X |
| マザーボード | ASUS ROG STRIX X670E-A GAMING WIFI |
| メモリ | TEAMGROUP DDR5 64GB(32GB×2、SK Hynix) |
| GPU | AMD Radeon RX 9070 XT 16GB |
| NVMe SSD | 2台 |
| HDD | Seagate 24TB |
| CPUクーラー | DEEPCOOL AK400 DIGITAL PRO WH |
| 電源 | Corsair RM850x 2024 |
| OS | Windows 11 |
以前はIntel Core i5-14500を使っていましたが、現在はRyzen 7 9700Xへ移行しています。i5-14500を交換したときの記録は、こちらの記事にまとめています。
SwitchBotプラグミニでPC本体を測定
測定には、SwitchBotプラグミニを使用しました。
この製品は、接続した機器の電力をSwitchBotアプリでリアルタイムに確認できます。
今回の測定条件は次のとおりです。
- SwitchBotプラグミニをPC本体の電源系統へ接続
- モニターは別系統のため測定対象外
- USB周辺機器は接続しない
- Windowsの起動後、操作を止めてアイドル状態の表示を確認
- 設定変更の前後で、PCのパーツ構成は同じ
測っているのはCPU単体の消費電力ではなく、電源変換の損失を含むPC本体全体の消費電力です。
SwitchBotプラグミニは原因を直接教えてくれる機器ではありません。しかし、設定を変える前後でコンセント側の数字がどう変わったかを見るには分かりやすい方法でした。


AM5パソコンのアイドル消費電力が高いと気づいたきっかけ
家庭内には、Ryzen 9 9950XやNVMe SSD 4台、360mm簡易水冷を搭載した、もう1台の自作PCがあります。
こちらは部品点数が多く、かつ高性能にもかかわらず、アイドル状態は100.3Wでした。一方、私のRyzen 7 9700X搭載PCは、EXPO-6000を有効にすると主に113〜114Wです。

CPUのグレードや搭載部品の数だけでは、アイドル消費電力を説明できませんでした。そこで実際に得られるパフォーマンスと消費電力に疑問を持ったのがきっかけになりました。
変更したのはメモリのEXPO設定
AMD EXPOは、対応するDDR5メモリの周波数やタイミングなどを、用意されたプロファイルで設定する仕組みです。AMD自身も、EXPOをメモリのオーバークロック機能として案内しています。
私のメモリには、次のプロファイルが入っています。
| プロファイル | 実効速度 | 主なタイミング | DIMM電圧 |
|---|---|---|---|
| EXPO-6000 | DDR5-6000 | CL34-44-44-84 | 1.350V |
| EXPO-5600 | DDR5-5600 | CL40-40-40-84 | 1.300V |
それまで使っていたのはEXPO-6000です。BIOSでEXPOを無効にすると、CPU-Z上では次の状態になりました。ちなみにEXPO-6000を使っていたのは、特に理由もなく、「使える機能があるなら、使ってみようじゃないか」レベルでした。
| 項目 | EXPO解除後 |
|---|---|
| DRAM Frequency | 約2395.5MHz(実効約4791MT/s) |
| メモリ表記 | DDR5-4800 |
| タイミング | CL40-40-40-77 |
| UCLK:MCLK | 1:1 |
EXPO解除後はDDR5-4800へ下がり、UCLK:MCLKは1:1を維持していました。
実測結果は約114Wから約99W
単発の数字に寄せないため、SwitchBotの表示を複数回記録して中央値を比較しました。EXPO-6000を有効にした状態では中央値113.95W、EXPOを解除した状態では98.9Wでした。
| 測定状態 | 記録範囲 | 中央値 | 主な安定範囲 |
|---|---|---|---|
| EXPO-6000有効 | 113.0〜120.3W | 113.95W | 113.0〜114.1W |
| EXPO解除 | 85.9〜100.7W | 98.9W | 98.7〜99.3W |
| 差 | — | 15.05W | — |
設定を元へ戻すだけで二桁下がったのは、正直かなり意外でした。
家庭内のもう1台のPCは約100Wなので、EXPO解除後は私のPCのほうがわずかに低くなりました。部品点数が少ない側の消費電力が低いという、納得しやすい順番に戻りました。
なぜ下がったのかは、実測結果と推測を分けて考える
今回、確実に言えるのは次の2点です。
- 同じPCでEXPO-6000を有効にすると、中央値113.95Wだった
- EXPOを解除すると、中央値98.9Wになった
一方、約15Wの内訳までは測定していません。
EXPO解除によって、メモリクロック、タイミング、DIMM電圧など複数の設定が同時に変わります。マザーボード側でSoC電圧や関連クロックが変化した可能性もありますが、変更前後の電圧を記録していないため、どの項目が何W分を占めたかは断定できません。
この記事では、「EXPOを解除したら下がった」という実測結果と、「なぜ下がったか」という推測を分けて扱います。
EXPO解除には性能面の代償がある
消費電力だけを見れば、EXPO解除は良い結果でした。しかし、DDR5-6000からDDR5-4800へ下がるため、性能面ではトレードオフがあります。
私の普段の用途は、4Kディスプレイでの一般作業、写真編集、たまにゲームをする程度です。EXPO-6000からDDR5-4800へ変えても、普段の操作で体感できる差はありませんでした。
性能差を確かめるため、Cinebench 2026とGeekbench 7を、EXPO-6000とEXPO解除でそれぞれ3回ずつ実行しました。比較には3回の中央値を使っています。

素人測定の範囲内で話をとらえていただきたいのですが、GeekbenchではSingle、Multiとも約1.3%低下しました。メモリ速度を6000から4800へ落とした代償はありますが、普段の操作で体感できなかったことと矛盾しない程度でした。
一方、CPUレンダリングのCinebenchは、EXPO解除後のほうが3.3%高い結果でした。これは「メモリを遅くするとCPUが速くなる」という意味ではなく、Cinebenchはメモリ速度の影響が比較的小さく、バックグラウンド処理や温度、EXPO有効時にSoC・メモリ側へ使われる電力などが影響した可能性はありますが、今回の測定だけでは理由を断定できないと思っています。
少なくとも今回の3回測定では、EXPOを解除してもCPUレンダリング性能の低下は確認されず、実用途寄りの総合性能低下は約1.3%でした。
そのため、「EXPOは切ったほうがよい」と一律には勧めません。
- アイドル消費電力を優先するならEXPO解除
- メモリ性能を優先するならEXPOを有効化
- 中間を狙うならEXPO-5600を試す
という選択になります。
私のメモリにはEXPO-5600のプロファイルもありますが、5600設定の消費電力は未測定です。約99〜114Wの間になると決めつけず、実際に試したときに追記します。
約15Wの差を年間電気代にすると
電力差を年間電気代へ換算してみます。
計算式は次のとおりです。
削減電力(kW)× 1日の使用時間 × 365日 × 電力量単価
我が家で計算に使っている電力量単価35.94円/kWhの場合、中央値の差15.05Wは次の金額になります。
| 1日の稼働時間 | 年間の削減額 |
|---|---|
| 8時間 | 約1,580円 |
| 12時間 | 約2,370円 |
| 24時間 | 約4,740円 |
1日8時間程度なら、金額だけを見て大きな節約とは言えません。
それでも、費用をかけずに設定1項目で下げられ、私の用途では体感差もありませんでした。そのため、現在はEXPOを解除した状態で使っています。
電力量単価は契約や時期によって変わります。自分の環境で計算するときは、電気料金の明細にある単価を使ってください。
同じ設定を試すときの注意点
BIOSの項目名や場所は、マザーボードとBIOSバージョンによって異なります。
また、EXPOはメモリ性能を高めるための設定です。解除すると消費電力が下がる可能性がある一方で、メモリ性能も下がります。変更前の設定を写真などで残し、問題があれば元へ戻せるようにしてから試してみると良いと思います。
また、確認するときは、次の条件を揃えると比較しやすくなります。
- 同じPC構成で測る
- 起動直後ではなく、処理が落ち着いてから測る
- モニターやUSB機器を含めるか、測定範囲を統一する
- 常駐アプリやWindows Updateなどの処理が動いていないことを確認する
- 変更前後のメモリ速度とタイミングをCPU-Zなどで確認する
瞬間的な1回の数字だけでなく、表示が落ち着いた状態を比較することも大切です。
まとめ
- Ryzen 7 9700X+X670Eの自作PCをコンセント側で複数回測ると、EXPO-6000時の中央値は113.95Wだった
- BIOSでEXPO-6000を解除すると、中央値98.9Wへ低下した
- 同じPCで確認できた差は15.05W(13.2%)
- EXPO解除後のメモリはDDR5-4800 CL40、UCLK:MCLKは1:1だった
- 約15Wの内訳は未測定なので、SoC電圧など個別の原因までは断定しない
- Geekbench 7はSingle/Multiとも約1.3%低下したが、Cinebench 2026は3.3%高く、CPUレンダリング性能の低下は確認されなかった
- 私の普段の用途では体感差がなかったため、現在はEXPO解除のまま使っている
- 1日8時間、35.94円/kWhなら年間約1,580円の差になる
PCのアイドル消費電力が気になると、電源やマザーボードを交換したくなるかもしれません。しかし、ハードウェアを買う前に、まず現在の消費電力を測り、BIOS設定を1項目ずつ確認するほうが先です。
私の環境では、体感できる性能差がないまま、EXPO解除によって約15W削減できました。
ちゃんと意味を理解して、設定すべきですね。勉強になりました。

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